再生可能エネルギーの普及を支える日本の主要な制度として、FIT(固定価格買取制度)とFIP(フィードインプレミアム制度)があります。これらの制度は、再生可能エネルギーの導入促進とエネルギー自給率の向上を目的としています。本記事では、これらの制度の概要や特徴、課題について解説します。
FIT制度:再エネ導入の基盤
FIT制度は、再生可能エネルギーで発電された電気を、電力会社が一定の価格で一定期間買い取ることを国が保証する制度です。これにより、発電事業者は安定した収益を見込むことができ、再エネ設備への投資を促進します。

対象となる再生可能エネルギー
FIT制度の対象となる再生可能エネルギーには、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの5つがあります。これらのエネルギー源を利用し、国が定める要件を満たす事業計画を策定し、新たに発電を始める方が対象です。発電した電気は全量が買取対象となりますが、住宅の屋根に設置する10kW未満の太陽光発電や、ビル・工場の屋根に設置する10~50kWの太陽光発電の場合は、自家消費後の余剰分が買取対象となります。

再エネ賦課金の仕組み
FIT制度で買い取られる再生可能エネルギーの費用は、電気の使用者から再エネ賦課金として広く集められます。この賦課金は、電気料金の一部として毎月の電気料金とともに支払われ、電気の使用量に比例して負担されます。再エネ賦課金の単価は、全国一律となるよう調整され、経済産業大臣が毎年度決定します。

FIP制度:市場連動型の支援
FIP制度は、再生可能エネルギーの発電事業者が市場価格にプレミアムを上乗せした価格で電気を販売できる制度です。これにより、発電事業者は市場価格の変動に応じた収益を得ることができます
FIT制度との違い
FIP制度とFIT制度の主な違いは以下の通りです:
- 買取価格:FIT制度では固定価格での買取が保証されますが、FIP制度では市場価格にプレミアムを加えた変動価格となります
- インバランスの負担:FIT制度ではインバランス(発電計画と実績の差)に対する特例があり、発電事業者は負担を免れますが、FIP制度では発電事業者がインバランスの責任を負います。
- 非化石価値の取引:FIP制度では、非化石価値を証書化して取引市場で売買することが可能ですが、FIT制度では非化石価値は固定買取価格に含まれ、取引はできません。
FIP制度のメリット
FIP制度を活用することで、発電事業者は市場価格が高い時間帯に電力を販売することで、収益の最大化を図ることができます。また、FIT制度の適用期間が終了した後も、FIP制度に移行することで引き続き支援を受けることが可能です。
制度の課題と対応策
FIT/FIP制度の運用においては、法令違反や不適切な事例が報告されています。例えば、農地法や森林法に違反した太陽光発電事業に対して、資源エネルギー庁は交付金の一時停止措置を実施しています。これにより、法令遵守と地域との共生を促進し、健全な再エネ導入を目指しています。
発電側課金制度の導入
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、送配電設備の維持・拡充に必要な費用を発電事業者にも一部負担してもらう「発電側課金制度」が導入されました。これにより、系統の効率的な利用と公平な費用負担が図られます。なお、既認定のFIT/FIP電源については、調達期間終了後に課金対象となります。
まとめ
FIT制度とFIP制度は、日本の再生可能エネルギーの普及を支える重要な制度です。FIT制度は安定した収益を提供し、再エネ導入の初期段階を支援します。一方、FIP制度は市場価格に連動した収益を可能にし、発電事業者の自立を促進します。これらの制度を適切に活用し、法令遵守と地域との共生を図ることで、持続可能なエネルギー社会の実現が期待されます。
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