秋⽥県由利本荘市沖洋上風力発電プロジェクト

Akita Yurihonjo Offshore Wind JP

日本は、洋上風力発電の導入を加速させており、その象徴的なプロジェクトの一つが秋⽥県由利本荘沖洋上風力発電プロジェクトです。本事業は、日本政府が進める第1回洋上風力発電入札(通称:ラウンド1)の一環として実施され、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWの洋上風力発電容量を確保するという国家目標達成に向けた重要なステップとなります。

本プロジェクトの総発電容量は845MWに達し、着床式洋上風力発電として日本の電源構成の脱炭素化に大きく貢献するとともに、地域産業の発展や経済活性化を促進することが期待されています。この記事では、プロジェクトの詳細、スケジュール、推定されるCAPEX&OPEXについて詳しく解説します。

プロジェクト概要

プロジェクト名秋⽥由利本荘オフショアウィンドファーム
開発事業者秋⽥由利本荘オフショアウィンド合同会社
コンソーシアム三菱商事洋上⾵⼒株式会社、株式会社シーテック、株式会社ウェンティ・ジャパン、三菱商事株式会社
設置場所秋田県由利本荘市沖
発電方式着床式洋上風力発電
風車機種GE
供給価格11.99円/kWh
発電容量845MW(13MW×65基)
建設開始2026年3月(陸上)、2029年4月(洋上)
運転期間2030年12月~2052年3月

設置場所

Akita Yurihonjo Offshore Wind location
出典:秋⽥由利本荘オフショアウィンドファーム

発電設備概要

Akita Yurihonjo Offshore Wind overview
出典:METI公開資料(秋田県由利本荘市沖(北側・南側)洋上風力発電事業 概要説明)

プロジェクトスケジュール

プロジェクトのタイムラインとフェーズ

  1. 開発・設計フェーズ(2021年~2026年)
    • 2021年12月:公共入札の受注
    • 環境影響評価、風況、波浪、海底地質調査
    • FIT 申請および許可
    • 地元関係者説明・同意
    • ウィンドファーム認証、工事計画届
  2. 建設フェーズ(2026年~2030年)
    • 2026年3月:陸上変電所と送電インフラの建設
    • 2029年4月:洋上基礎とケーブルの設置
    • 2029年:風力タービンの組立と設置
  3. 運用・保守フェーズ(2030年~2052年)
    • 風車の維持管理:GE
    • 操業・保守(洋上):北拓
    • 操業・保守(船舶保有・管理):日本郵船
    • 操業・保守(陸上系統):シーテック
  4. 撤去・再発電フェーズ(2052年以降)
    • 風力発電設備の寿命終了時の計画
    • 将来のエネルギー政策に基づく再稼働の可能性
Akita Yurihonjo Offshore Wind schedule
出典:METI公開資料(秋田県由利本荘市沖(北側・南側)洋上風力発電事業 概要説明)

CAPEX & OPEX 推定 (NEDOモデルに基づく)

資本支出(CAPEX)と運用支出(OPEX)を、最新のNEDO洋上風力発電コストモデルに従い推定しました。

秋⽥県由利本荘沖洋上風力発電プロジェクト資本支出(CAPEX)の推定は約3482億円で、運用コスト(OPEX)は年間約68億円と推定されます。

📌 CAPEX 内訳 (845MW)

資本費の構成推定費用 (億円)
風車1915
基礎&施工1323
変電所 & 系統接続 等244
合計3482

プロジェクトの重要性

日本最大の着床式洋上風力発電プロジェクト

845MWの容量は、日本の洋上風力発電の新たな基準を設定し、将来の大規模プロジェクトへの道を開きます。

地域経済の発展と雇用創出

秋田県の地元産業と労働力を支援し、サプライチェーンとメンテナンス分野で数千の新規雇用を創出

日本のエネルギー安全保障の強化

化石燃料やLNG輸入への依存を減らし、電力網の安定性と再生可能エネルギーの統合を促進

将来の洋上風力への道を開く

第1ラウンドのプロジェクトとして、今後の第2~第4ラウンドの入札におけるベンチマークとなる

事業計画をゼロベースで見直し?

三菱商事は、国内3カ所の洋上風力発電プロジェクトの見直しに伴い、2024年4〜12月期に522億円の減損損失を計上したと発表しました。中西勝也社長は記者会見で「減損は重く受け止めている」とし、今後の事業方針をゼロベースで検討する意向を示しました。

減損の原因と今後の方針

三菱商事は2021年の入札で3案件を受注し、約3年間開発を進めてきたものの、世界的なインフレ、円安、金利上昇などの影響でコストが想定を大きく上回りました。そのため、採算性を再評価しており、最終的な事業継続の判断は今後決定するとしています。

また、計上した資産のほぼ全額を損失処理しており、今後追加の減損が発生する可能性はあるものの、影響は限定的と説明しました。

減損損失の内訳

  • 調査・設計・許認可取得の費用を資産として計上していたが、今回すべて損失処理。
  • 既に支払った費用に加え、今後発生予定のコストも含めた総額が522億円。

入札時の価格設定について

2021年の入札では、三菱商事は競合他社を大幅に下回る低価格で落札しましたが、同社は「エネコの知見を活用し、リスク分析を行った上での判断だった」と説明。結果として、想定以上のインフレやコスト上昇が事業の採算性に大きく影響したとしています。

洋上風力事業の今後

三菱商事は、洋上風力が脱炭素社会の重要な電源であることを認識しており、今後の事業方針については、インフレや金利、為替動向などを踏まえて慎重に判断する方針です。

まとめ:日本の洋上風力発電の未来に向けた課題と展望

秋⽥県由利本荘沖洋上風力発電プロジェクトは、日本の再生可能エネルギー拡大を象徴する重要な取り組みですが、コスト上昇、送電網の制約、地元漁業との調整、規制手続きの遅れなど、克服すべき課題も多く残されています。

一方で、政府の支援強化や技術革新、産業基盤の整備が進めば、これらの課題を乗り越え、日本の洋上風力市場はさらなる成長を遂げる可能性があります。今後は、投資家や関連企業にとっても、政策動向や市場環境を注視しながら、戦略的な対応が求められるでしょう。

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